2023年12月、長野県で放課後等デイサービス施設運営会社2社が指定を取り消されたというニュースがありました。
障害児通所施設関係者の方々にとって驚きのニュースであったと思います。
これを受けて、「自分の事業所は大丈夫だろうか?」「何に気をつければ良いのだろうか?」と不安になった方も少なくないでしょう。
この記事では、指定取り消しの事例とその理由、指定取り消しを受けないためにはどうすれば良いのかということについてわかりやすく解説いたします。
そもそも指定取り消しってなに?
「指定取り消し」とは、行政処分の一つです。
せっかく指定権者よりいただいた指定を取り消されることを言います。
指定取り消しされるとどうなる?
指定取り消し処分を受けると、事業を継続することができなくなります。
行政処分としては最も重い処分です。
◯報酬請求不可となる。(事業継続ができない)
◯報酬の返還(不正請求発覚時)
◯指定取り消しから5年間、新たな事業所の指定が受けられなくなる
◯指定取り消しされたことが都道府県より公表される
運営指導(実地指導)を受けているのに取り消されることはある?
運営指導(実地指導)を受けているからといって、指定取消処分を受けないというわけではありません。
指定取り消し処分に至る順序を説明します。
1運営指導(実地指導)
↓(1で疑わしい点が認められた場合)(※)
2監査
↓(2により事実関係が確認されたら)
3指定取り消し
指定取り消しは、運営指導(実地指導)→監査を経て不正・違反等が発覚した場合に下される処分です。
※実際には運営指導(実地指導)時等で指摘事項となったにも関わらず改善が見られない場合や、悪質性が高いと判断された場合等に監査が行われます。
指定取り消しになる理由
他にもありますが、今回は不正の多い順に4つご説明します。
不正請求
障害児通所給付費等の請求に関する不正がある場合です。
指定取消事由としては一番多いので注意が必要です。
うっかり間違えて請求してしまっていた場合、返還請求に応じれば取り消し処分にまで至らないことがほとんどです。
※悪質性が認められたり、不正金額が異常に高いと判断されれば取消処分に至る場合があります。
不正又は著しく不当な行為
障害児通所支援に関し不正又は著しく不当な行為をした場合です。
人員基準違反
人員基準を満たしていない場合です。
こちらもうっかり気づかずにやってしまいそうですね。
普段から特に気をつけて運営しましょう。
虚偽報告
帳簿書類の提出命令等に従わない場合や虚偽の報告をした場合です。
実際の取り消し事例
では実際の取り消し事例を確認してみましょう。
事例1 児発管を置いているように装った【虚偽申請】
長野県須坂市の放課後等デイサービス(2023年12月30日付)
【従業員の確保の見通しが立たないのに虚偽の内容で指定申請をした】という理由で指定が取り消されました。
具体的には、「児発管を置いているように装って」指定申請をしたということです。
(※現在、行政処分の取り消しを求める提訴をしています。)
長野県岡谷市、辰野町の放課後等デイサービス(2023年12月27日付)
【実際には児発管として勤務しない従業員が勤務表上は配置されているように装って指定申請した】という理由で指定が取り消されました。
上記とほぼ同じですね。
なぜ判明したのか
いずれも、「外部からの情報提供を受けて、県が調査していた」とのことです。
外部とは、利用児の保護者かもしれませんし、従業員のご家族かもしれません。
具体的には不明ですが、誰の目に留まっても堂々と法令遵守していますと胸を張れる運営が必要なことは言うまでもないですね。
事例2 減算算定しなかった【不正請求】
東京都の放課後等デイサービス(2020年付)
【減算の算定をせず、不正に障害児通所給付費を請求し、受領した】等の理由で指定が取り消されました。
具体的には、「児童発達支援管理責任者欠如減算とサービス提供職員欠如減算を算定しなかった」ということです。
事例3 減算算定せず、嘘の報告をした【不正請求と虚偽報告】
愛知県の放課後等デイサービス(2023年付)
【架空の報酬の請求を行った】
【減算の算定をせず、不正に障害児通所給付費を請求し、受領した】
【行政に対し虚偽の報告を行った】
等の理由で指定が取り消されました。
具体的には、「利用実績がない日について虚偽の支援記録を作成して請求した」
「児童発達支援管理責任者の常勤性が欠如していることを認識しながら、減算を算定しなかった」
「架空請求を行った日を一覧として提出するよう求めた際、明らかに過小な報告を行った」ということです。
事例4 要件を満たしていないのに加算の請求をした【不正請求と虚偽報告】
東京都の放課後等デイサービス(2020年付)
【加算や算定区分の要件を満たしていないにも関わらず、不正に障害児通所給付費を請求し、受領した】等の理由で指定が取り消されました。
具体的には、「児童発達支援管理責任者専任加算(※1)と児童指導員等加配加算、報酬算定区分1を算定した」また「報酬算定区分に関する虚偽の届出書を複数回にわたり都に提出した」ということです。
※1 現在は廃止されています。
指定取り消しにならないための対策
では、指定取り消しを受けないためにはどうしたら良いのでしょうか?
日頃から、
①指定基準(人員基準・設備基準・運営基準)をしっかり把握する。
②減算のかかる人員配置になりそうな場合は、速やかに指定権者に相談する。
③請求ミスに気をつけ、1人に任せきりにしない。必ず二人以上でチェック。
④行政からの指摘事項にはきちんと対応する。
まずは、運営指導(実地指導)での指摘事項ゼロを目指して
健全な運営を心がけましょう。
ご相談は弊所まで
弊所の記事をご覧になっても問題が解決しない場合には、一度ご相談をいただいた方が良い可能性があります。
お気軽に児発・放デイのすきっぷ(青柳夏苗行政書士事務所)までご連絡ください。