行政から案内が来ていると思いますが、保育士を雇用する際に毎回きちんとシステムで確認していますか?
お客様に確認させていただくと
「やってない…」「そんなのあるの?!」
というお返事をいただくこともあるこのシステム。ご存知でしょうか。
保育士特定登録取消者管理システムとは、わいせつ行為などで保育士資格を取り消された人をデータベースで管理するものです。
事業所での雇用の際に、このシステムを使わなければいけません。
今回は保育士特定登録取消者管理システムについて詳しくお伝えします。
※ 弊所ブログ記事はそれぞれの指定権者ごとの解釈に対応するものではありません。
必ずご自身でも指定権者や国保連などの最新情報をご確認ください。
保育士特定登録取消者管理システムとは
児童福祉法の令和4年6月改正により、児童生徒性暴力等(性的虐待)を行ったことにより保育士登録を取り消された者等(特定登録取消者)の情報がデータベース化されました。
令和6年4月1日より児童福祉法が改正され、本格的に運用されています。
児童福祉法 第18条の20の4では、保育士を任命・雇用しようとするときは同データベースを活用することを義務付けています。
データベース活用は義務です!
「調べてもいいよ」ではなく保育士雇用の際は、「調べなくてはならない」のです。
注意してくださいね。
対象となる職
対象となる職は、「保育士」です。
保育士とは、保育士登録を受け、保育士の名称を用いて、専門的知識及び技術をもって、 児童の保育及び児童の保護者に
対する保育に関する指導を行うことを業とする者
対象施設・事業者
対象施設・事業者は、「保育士を任命又は雇用する者」です。
もちろん児童発達支援・放課後等デイサービス事業者も対象です。
保育士を置くこと等が法令上明らかであり、所轄庁による指導監督権限が及ぶ施設・事業所が対象となります
データベースに掲載される情報
データベースに掲載される情報とは、
児童生徒性暴力等を行ったことにより保育士登録を取り消された者等の以下の情報です。
- 氏名
- 生年月日
- 登録番号
- 取消年月日
- 取消事由
- 児童生徒性暴力等の類型(教育職員等児童生徒性暴力等防止法第2条第3項第○号)等
データベースの利用方法について
対象施設・事業者の採用責任者がデータベースを利用することになります。
「採用責任者」は、当該施設・事業所における任命権者又は雇用主(任命権者等)、もしくは任命権者等から保育士の採用に関する権限を付与されている者のことです。(例えば、公立の施設・事業所の施設長又は市区町村採用責任者(人事担当課長等)、私立の施設・事業所の施設長、法人の長等)
指定権者からID付与に関してEメール等で連絡が来ているはずです。
見つからない場合は一度指定権者に確認してくださいね。
検索対象となる保育士の範囲
- 保育士資格を有するのみの者は対象外です。
- 保育士登録を行っていても、「保育士」の名称を用いて業務に従事していない者は対象外です。
- 法施行前にすでに在職中の保育士は活用の対象外です。
たとえば
- 「雇用の予定がない保育士に関して、システムを使用して興味本位で調べてみる」
- 「保育士資格を持っている人を、事務員として雇う」
- 法施行は令和6年4月1日。「その日以前にすでに雇用している保育士に関して、システムを使用して調べてみる」(令和6年4月1日当日の雇用を含みます。)
こういった場合はシステムを使用してはいけません。
検索の仕方
- 「任命し、又は雇用しようとする者」の「氏名」及び「生年月日」をデータベース上の情報と照合することにより、特定登録取消者に該当するかどうかを確認します。
- 特定登録取消者に該当する場合のみ、掲載情報が表示されます。
- 登録取消し以降の改名等のケースも考えられることから、現在の氏名と併せて旧姓や改名前の氏名(判明している場合)でもデータベースを検索します。
- 特定登録取消者に該当することがデータベースにより判明した場合、採用面接等を通じて本人に経歴等より詳細な確認を行ったり、本人の同意を得た上で過去の勤務先に事実関係の確認を行うなど、法の趣旨にのっとり、十分に慎重に、適切な任命又は雇用の判断を行う必要があります。
人権問題になりますので、行政としては「雇用してはならない」とは言いません。
でも雇用した後、あなたの施設で万が一同様(わいせつ等)の事実が発覚した場合、雇用したことへの責任は問われるものと思ってください。
また、このシステムを使用せず、万が一同様のことが起こったときも、システムを使用しなかった責任は問われるものと思ってください。
データベース利用者の義務・注意点
- 施設又は法人の採用責任者に対し1つのIDのみ付与されます
- 事業所内でのアクセス権限は、採用責任者として登録された1名に限定されます
- 多要素認証(個人メールへの確認コードの送付)を採用責任者に紐づけ、権限・責任のない者のデータベース利用を防止します
- 不正利用をしないこと
- パスワードを厳重管理すること
- 故意過失に関わらず情報漏洩が発生した際は、こども家庭庁への速やかな報告を行うこと
- データベース利用時に、どの時間に誰が何の目的で利用したかを特定できるよう、各機関において使用記録(検索対象者の記録を含む。)を保管します
- 利用IDにおいて不審な操作が確認された場合はこども家庭庁(保守・運用事業者)からの警告に従いデータベースの一時使用停止、こども家庭庁による事情聴取への対応などを行うこと
- 採用責任者が異動した場合、施設・事業所が認可取消し・廃止等になった場合、速やかにIDの変更・ 又はID抹消等の手続きを行うこと
データベースの活用方法について
このデータベースで採用内定予定者等の情報を検索するとき、基本的には本人の同意は不要です。
でも、検索の結果、採用しないとの判断をすることがあり得ますから
採用公募等の段階において、保育士としての採用を希望する者に対して、
- 採用内定前にデータベースの検索を行うことや、検索の結果、特定登録取消者に該当することが判明した場合は採用しない場合があることを書面等により提示
- 特定登録取消者に該当する場合はあらかじめその旨を申告するよう求める
ことが望ましいとされています。
現場のスタッフさんへおねがい
現場にいる児童指導員や保育士、児発管等のスタッフ様にもできることがあります。
それは、「声をあげる」ということです。
性的虐待にかかわらず、不適切な保育・療育を行う専門職が現場に居るという経験をお持ちの方は少なくないはずです。
もし周りのスタッフにそういう方が居るかも知れないという方がいらっしゃれば、まずは信頼できる仲間に相談するなどしてください。
そしてそのスタッフさんの言動を注視してください。
度を超えた言動がある場合は、迷わず上司等に相談のうえ市町村や都道府県に通報です。
子どもを守るために必ず取り組みましょう
残念ながら本来、子どもの成長を支える役割を担う保育士による性的虐待事件が、増加傾向にあります。
このシステムの使用は、罰則こそありませんが、事業者としての義務です。できることは積極的に取り組みましょう。
「保育士特定登録取消者管理システム」の運用が着実に進むことを見守りつつ、現場の児童指導員や保育士、児発管を含むスタッフ様全員で、子どもたちをしっかりと守り抜いていただくことを心から願っています。
ご相談は弊所まで
弊所の記事をご覧になっても問題が解決しない場合には、一度ご相談をいただいた方が良い可能性があります。
お気軽に児発・放デイのすきっぷ(青柳夏苗行政書士事務所)までご連絡ください。